銀座シネマタイム7 ディファイアンス 配給:東宝東和

銀座シネマタイム7 ディファイアンス 配給:東宝東和

ディファイアンス 配給:東宝東和

7人目のボンド役が誰になるかは、イギリスの次期首相より関心事だったと思う。前作からダニエル・グレイグになった時は本当に驚いた。多くの男性ファンから反対されたらしい。考えてみると、ボンドファンは男性で、今までは男性が憧れる役者が選ばれていたのだろう。実際女性が抗えない魅力を持つ人物像は、あくまでも男の幻想で、女性から見たら笑止千万かもしれない。ワイルドなグレイグがクールな表情で、死んだ恋人の恨みを晴らすべく、ストイックに殺戮をする様は今の英米の心境そのものだ。
特に、隠し切れない失敗と忘れ去ることのできぬ公開を胸に秘めて、ただひたすら復讐に向かう様は、本当に世界を支配する民族にはかなわないと思う。グレイグの真骨頂は007よち、新作「ディファイアンス」にある。第2次世界大戦中、旧ソ連ベラルーシはナチスの侵攻を受け、ユダヤ人ビエルスキ4兄弟は森に逃げこもるが、やがてゲットーから逃げてきた多くのユダヤ人を引き連れそのリーダーになる。1000人を超える老若男女をまとめ、ソ連共産党、パルチザンと共闘しながらも、ナチス側憲兵と戦闘殺戮もし、時には戦闘機から逃げ惑い、生き抜いて行く実話である。ロマンチックに描かれた「チェ・ゲバラ39歳別れの手紙」と併せて観賞してほしい。殺された妻の復讐を遂げるべく、夕食中の憲兵の家に単身踏み込み、命乞いをする憲兵のみならず、その子ども達も撃ち殺して逃走するグレイグは「007慰めの報酬」の一場面と錯覚してしまった。ダニエル・グレイグは復讐を胸に秘めた男の顔。007ボンドより「ディファイアンス」である。