感染列島
パンデミックと振り仮名が付けられています。この映画でこの言葉が国民に広まるかもしれません。新型インフルエンザの爆発とその対策に身命をかける医師たちの話です。
事件の骨格も、展開も、恋人だった医師との再会や自己犠牲。ご想像のとおりのストーリー展開ですし、結末も期待を裏切りません。最近感心するのは、脚本を作るに当たり、よく医師の指導を受け、うそや無理がないことです。壇れい演じる主人公医師は、キャリアを求めてWHOに参加するために海外に行ってしまったのが理由で恋人と別れ、この事件で帰国し、担当官として昔の恋人に再会します。難民の子供の母親代わりをしていたり、厳しい仕事に命をかけ、トリアージにひるむスタッフを前に自ら延命装置の移動をします。現代はこういう格好いい辛い役は、女性の方が似合うのでしょう。ひたすら壇れいがジャンヌダルクのように、立派で格好よくひた向きでそして悲惨です。主人公は妻夫木ではなく、壇です。彼女は今一番人気のある女優です。でも、病院に長く軟禁状態で仕事をしていてもいつも、髪型もお化粧も完璧なのは不自然です。吉永小百合の映画もそうです。美しい人は戦場にあってもけがれなき美顔でなくてはならないのでしょう。でも、汗と涙で崩れた素顔の、髪をゴムバンドで束ねた壇れいを見たかったなあ。そういえば男性も髭の伸びた人は見当たりませんでした。不自然です。でも、閉鎖された病院の院長はじめスタッフの演出も良く、大味のパニック映画にせず、きめ細かな人間ドラマに丁寧に仕上がっています。この映画は高校の授業で見てほしいです。でも、何の授業でしょうか。倫理社会?生物学?進路指導? 今の子はこの映画に感動し、そして、医療はやっぱり大変だ、命がけだと、とニュースキャスターを目指すのかも知れませんね。今晩は焼き鳥にしよう。(こ)