【銀座湖山日記/10月6日】泰成君のノーベル賞

【銀座湖山日記/10月6日】泰成君のノーベル賞

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小学生の泰成君は、ノーベル賞物理学者に憧れていた。
宇宙の神秘を解き明かす天文学、地球物理学。
生命の起源を解き明かす分子生物学。
勉強も、数学が1番得意。特に幾何学が。
そういえば、何故か、ノーベル賞に数学はない。
ノーベルは数学が不得意だったのかなあ。
今もそうだが、虫とか動物とか、生き物が苦手で、潔癖症だった。
カマキリ、カブトムシを掴めなかった。
浜辺では、砂が足元につくのが嫌で、ゴム草履を履けなかった。
半ズボンが嫌で、学年中で、長ズボンを履いている小学生は、私1人だったと思う。
生々しいものが、苦手で、食べ物も、生き物の正体を想像できるような調理では、口に運べなかった。
刺身は食べられても、焼き魚は苦手だったのである。
ノートも一文字間違えると、全ページ書き直したりする。
強迫神経症だったのかもしれない。
今の私をご存知な方は笑い出すだろう。
数学や幾何学や哲学は、抽象的で、綺麗に感じられた。
醜く生温かい、生身の人間が苦手だった。
人間関係も、友情も、私の心が持つには熱すぎた。
いつも、火傷をしてしまい、氷を手に乗せる冷たさの方が、気持ちよかった。
少なくとも、安心できた。
数学と孤独は表裏一体。
1人で映画館に一日中こもっているのは、その心象の延長かも。
群衆の中の孤独。
権力の中の虚弱。
アンビバレンツな心を解き明かす方程式は、この年になっても、未だ見つからない。
ノーベル賞に数学がないのは、永久に見つからない事を、わかっていたからだろうか。
存在しない方程式を解き明かす。
地図のない道を征く。
今日の私は、ヒロイズム一杯だ。
南極でオーロラを観測しながら、地球物理学を研究するのが、泰成君の夢だった。
南極に特養ホームは許可にならないだろうか。

本日職員新規PCR検査陽性者0
御苦労様です、感謝致します。

今朝のパルスオキシメータ 98・98・99
南極越冬隊長 湖山泰成

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【銀座湖山日記】

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