父故湖山理事長の一高の同窓会は囲碁とゴルフの会だった。
私はお茶汲みでいつも同席させていただいた。
その時に聞いた話。
メンバーは皆財界人、大蔵次官、大臣。
鉄鋼会社の重役で、その後、財界総理となられた方だったと思う。
大手町本社は仮ビル。お金は工場にかける。
工場が1番大事、誇り。
本社にはクーラー設備がない。
工場は、クーラーもなく、汗をかきながら、24時間操業。
本社の事務だけが、涼しく楽になるわけにはいかない。
胸を張って、自慢げに話をしていた。
10代の頃の事だが、子供心にも、人の上に立つ人の考え方は立派なものだと、感心した事を覚えている。
昔の事なので、今は、本社も、工場も空調は完備している。
本社は今でも仮ビルではないかな。
急成長した会社が、分不相応な立派な本社ビルを建てて、後、倒産すると言う事はよくある。
経済誌に、新社屋の立派な社長室で、自慢げな社長の写真があったら、その会社の株は即売った方が安全だ。
老人ホーム、特養ホームで立派な理事室、施設長室のある施設で、良い施設は見た事がない。
理事長、施設長が威張っている施設である。
湖山でも、立派な応接セットを置いてあると、移動させて、ミーティングテーブルに変えさせる。
高級ソファーに、低いティーテーブルでは、仕事にならない。
昔の中小企業の社長室である。
湖山Gは全て現場。
私のいる部屋、机も経営現場である。
自慢ではないが、1番安いオフィス家具だ。
調達したスタッフが、私に自慢していた。
確かに座っていると、お尻が痛くなる。
長時間は使えない。会議も短時間で終わる。長居する来客は少ない。
私の銀座の事務机には、電話機がない。
受話器の数が足らなく、私は必要がないだろうと言うことになったそうだ。
私に電話がかかってくると、秘書の机まで行って、受話器を受け取る。
私への連絡は、なるべく、メールか携帯にて、お願いします。
大型の特養ホームで、1番お金のかかっている部屋は、職員の休憩室。
ぜひ、ご覧あれ。昼寝したくなる。
病院は霊安室に1番お金をかけた。
絨毯を引き詰め、高級ソファに、電気ポット、お茶器。
患者が亡くなると、家族は深夜に集まってくる。
コンクリートの床に折り畳み椅子。
隣は、ゴミ排出室。
確かに、死者は、価値がないのだろう。病院にとっては。
大学病院の霊安室を見て、がっかりした事があり、自分の設計では、配慮した。
30年前の事なので、今は大学病院はそのような事はない。と、思う。
遺族の気持ちを考えていないのだ。
最高級の医療への感謝も、死後の扱いで、吹っ飛ぶ。
湖山では、死者の搬送は、正面玄関から、スタッフがお見送りをするようになった。
今では、珍しくないだろうが。
コロナの雨が止まない。
自宅蟄居して執務している。
お歳暮が来ても、宅急便は、玄関の前に置いてもらって、取りに行く。
自分はそういう配慮ができるが、介護現場はそれでは仕事にならない。
送迎車両に乗り降りさせる時には、抱き抱えないと無理な老人が多い。
入浴、食事、2メートルのディスタンスなど取れるわけないではないか。
保健所の所長で、介護も防御服を着れば、何も心配いらないのですよ。
と、私に教えて下さった人がいた。
私は呆れた。
では、その防護服を毎日100着配給してください。現場のスタッフに。
これから、施設に来て、入浴、食事介護、送迎を体験しに来ませんか。
防護服を着ていらっしゃれば、安全ですから。
と、心に思った。
所長は、医師だ。
所長室で、ハンコを押すだけの仕事では、ないはずだ。
今でも、お待ちしています。
現場が1番大変。1番大事。
今の私は、安全な場所で、報告メールを読んで、返事を返すしかできない。
それでも、現場を支える経営の仕事を、誇りに思っている。
現場も経営も24時間365日。
後2年は、この時代が続く。今日迄湖山職員にコロナ16人。
御苦労様です。感謝致します。
湖山G代表 湖山泰成
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【解説】
解説に関しましては以下URLをご参照いただければ幸いです。
http://koyama-cn.com/?p=16894?cat=11