【銀座湖山日記/8月15日】今年の夏に失ったもの

【銀座湖山日記/8月15日】今年の夏に失ったもの

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36年前、事務長2年目の夏。
病院は黒字基調になったが、余裕があるわけではない。
サッポロビアホールに職員を引き連れて行けるようようになるのが来年の目標かなと考えた。
手に届く、それぐらいが日々の目標、贅沢だった。
そこで、銀座病院の屋上で、手作りビアホールを作ろうと思い立った。
当時、屋上は、物干し竿が並び、洗濯物がはためいていた。
空から、航空写真を撮られたら、銀座にもシーツやタオル、白衣が干されている屋上があるのが分かったはず。
患者さんにも憩いの屋上だった。
夜、施錠に行くと、タバコを吸っていたり、ラブシーンがあったり。
ベンチもなかったので、大塚製薬からイベント用のプラスティックベンチを多数頂いて並べた。
濃紺の椅子には、黄色で、オロナミンCと書かれている。
今は見なくなった。
夜間だが、ライトがない。
我がままを言って、葬祭業者に葬式用の提灯灯を屋上の柵に張り巡らした。
お盆に相応しい風景。
楽しく、思い出の職員手作りのビアホール。
生ビール樽や、かき氷機が並ぶ。
どこかの業者さんに頼み込んで持って来てもらったに違いない。
ボーナス支給の前日にしたのではないかと思う。
金欠の頃を狙って、まだ、少ないボーナスのお詫びと考えた。
楽しかったはずだが、困った事もあった。
屋上で、トイレがなく、いちいちエレベーターで階下に降りないといけない。
2年くらいでやらなくなったのは、ビアホールに行くだけのボーナスを出せるようになったからだが、トイレの件もあったかもしれない。
若い時の貧しさは、年月がたつと、涙の思い出となる。
渡哲也が亡くなった。
小学校生の時、映画館で「東京流れ者」を観た。
当時、祖父の知り合いに、映画のチケットをくれる人がいた。
住宅街の暗い映画館だった。
ポップコーンとコーラが楽しみで、映画に付き合う。
白黒の画像。
松原智恵子より、渡し舟に乗る、渡哲也の暗い風情が記憶にある。
ヤクザ映画だったと思う。
歌がヒットして、今でも耳に残る。
生き延びて、恋人とも別れ、また別の街に流れる。
彼が助けに来てくれる。
彼がまた、去って行く。
男の映画には、この2シーンしかない。
今年は、まだ、冷やし中華を食べていない。
今年の夏に失ったものは数知れない。

今迄湖山にコロナ2人 ご苦労様です
感謝致します

湖山グループ 代表 湖山泰成