【銀座湖山日記/7月9日】木を切る

【銀座湖山日記/7月9日】木を切る

26553_s
今の渋谷の自宅はもう40年以上になる。
7年前に母が癌で亡くなり、父が入院した。
昨年9月に父が亡くなって、帰って来る家族が誰もいなくなった。
母がいなくなって以来、家全体が、倉庫状態になっていた。
母の着物や、好きなリヤドロの陶器人形などの、湖山思い出館と言いたいところだが。
まあ、他人が見れば、耄碌老人ゴミ屋敷である。
父の背広はサイズが合わず、ディナージャケットと普段着ていたジャケットを残して、他はこの手で捨てた。
いつも愛用していた、紐ネクタイは父がお世話になったスタッフに受け取ってもらった。
医学書や東大医学部の同窓生の著作は、東京本部の書棚に揃えた。
ネクタイは今日も、私が締めている。
時々、このネクタイに首を絞められるのではないかと怯えている。
鞄、バックが沢山あるので、日替わりで使って、捨てていこうと思う。
山のような、家族写真アルバムはそのまま開けずに積んである。
怖くて、開けられない。
トキワ荘マンガミュージーアムが今週開館した。
子供の頃の憧れだった。
植木職人が庭の手入れに来る季節になった。
毎朝、2階の食堂で目の前の公園を眺めながら、この日記を書いている。
二本の木が、2階のベランダを超えるまで育ち、目ふさぎになってきた。
庭の木より、公園の風景を気に入っている。
今年は、この40年育った松を切ることにした。
自分の手の届く低木だけ残す。
植木職人が入るのは今年が最後になるだろう。
湖山に巨木、大木はいらない。
豪華な蘭もいらない。
一輪の白百合、一輪の薔薇くらいなら許そう。
菜の花畑が好きだ。
湖山グループは13000の野の花畑。
だから、美しい。
私も、野の花畑の一つの花である事の幸せに感謝している。
私は、根っこかな。
日の光の届かぬ地の中の方が、心休まりそうだ。
やがて、花も人も地に戻る。

今日迄湖山にコロナ1人 ご苦労様です
感謝致します

湖山グループ 代表 湖山泰成