【銀座湖山日記/6月20日】一番の部屋

【銀座湖山日記/6月20日】一番の部屋

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銀座の救急病院は政財官の患者が多く、充実した繁栄期を迎えました。
でも、なんと言っても建物設備が古い。
それ以上に、とにかく狭い。
カルテ棚も床から天井まで。
その裏のソファーベットが事務当直の寝床です。
2年間、毎週木曜日の私の寝床です。
茶色のビニールのソファーの色を忘れません。
薬局は潜水艦と呼ばれていました。
在庫の薬箱が壁際に天井迄積んであります。
薬剤師はスマートな女性しか通れません。
裏の職員通用口の手前にはゴミ箱が並んでいました。
昼間、遺体を病院から送るのに、混雑したロビーを通れず、裏口を使った事がありました。
心が痛みました。
富士で新しい病院を開設した時に一番気を使い、お金をかけた部屋があります。
霊安室です。
ご遺族は夜遅くに病院にいらっしゃいます。
大学病院だと特室に入っていたVIPも、亡くなると患者から遺体、つまり物体になります。
駐車場のコンクリートの床の上で霊柩車を待った事がありました。
それまでの病院への感謝が吹き飛んでしまった記憶があります。
遺族を迎え、人間として、家族として、最期の御見送りをしたい。
だから、床には最高の暖かい絨毯、冷たい壁と外への鉄の扉は、グリーンのカーテンで隠します。
控室には、ゆったりしたソファー、テレビ。
電気ポットに、選んだお茶器。
家族が揃う迄、温かい富士のお茶で、体を温めて下さい。
富士の麓は夜は寒いです。
その部屋も、今は殆ど使われていないと思います。
ご家族と一緒に担当スタッフがお見送りします。
最初に病院に来た時と同じ、ロビー玄関から。
30年前の、私が初めて設計した病院です。

今日迄湖山にコロナ1人 ご苦労様です
感謝致します

湖山グループ 代表 湖山泰成