28歳の新人事務長。先ずは経費節減。
どう見ても、部長幹部が業者に癒着して、リベートを貰っているようす。
請求書や、納品書のみならずあらゆる郵便物を全て私一人で開封する事にした。
幹部職員が信用出来なかったからである。
土曜日丸一日をに当てた。
地下の事務室に早朝から一人で郵便物を開ける。
机の左に郵便物を積むと1メートル近くある。
それをチェックしたら右へ積み替えて行く。
見るだけで半日かかるが、孤独で深い仕事だった。
病院の総売上から適正経費を割り出し、節減額を計算する。
そして、その差がどこに消えているのか推理する。
つまり、誰がリベートを貰っているのか推理するのである。
薬、検査、清掃業者、リースから入札で業者を変えたら、幹部職員から総スカンと言うか大パニックと言うか大バッシングを受けた。
銀座の夜道は気をつけて歩いた、と言うのは冗談にならなかった。
最新の新薬以外は使えない、医療の質が落ちる。
F社のフィルムでないと正確な読影が出来ない。
検査は外注などしたら質が保証できない。
銀行マンなどに医療はわからない。
赤字の責任は経営者が負うべきもので、私達は最高の医療を提供している。
今でもそう私に行ってきた医師や部長の顔付きや声は忘れない。
当たり前の品質の物を当たり前の価格で買うだけである。
事務関係も呆れた。
名刺の価格が相場の2倍。
白衣や看護服の注文数が職員数の2倍。
銀座だから職員の出入りが多かったが、辞めた人のは解約せず、新しい職員のは追加注文する。
事務員に聞くと、事務長が一人で発注しているので誰も言えないとの事。
事務長がいくらぐらい貰っているのか積算できた。
当時はゴルフ接待が多かった。
通りでゴルフが得意なわけである。
全幹部の文化常識となっていた。
健診の為、眼科もあった。
銀座の有名眼鏡店が提携紹介店であった。
銀座通りの店だったので店長に挨拶に行った。
経営が変わったのですか?
では、これからは何方にリベートをお渡ししたら良いのですか?
此処まで徹底していたらほとほと感心した。
いえいえリベートは結構です。
お客様にその分もサービスして下さい。
でも、今思うと、キチンと領収書を発行して病院に入金しても良かったかも知れない。
所詮、職員は今度も、新人事務長が引き継いだと思ったかも知れないから。
3時頃に終了すると、自分へのご褒美で近くの銀実会会員のお寿司屋さんに行きます。
昼と夜の間の時間で、店には仕込みをしているご主人と、客は私一人だけ。
当時としてはまだ珍しく、魚のガラスケースは無く、檜の箱に魚を入れて、濡れた布巾を掛けてある。
夜の客が来るまでの、のんびりした贅沢な最高のギンザタイム。
ガラスケースのない檜のカウンターを挟んで主人と客の会話。
銀座の事を教えてもらった。
もうとっくに世代がわりをしている筈です。
あの時代の寿司ほど美味しい寿司は思い出せません。
涙と共にパンを食べた事の無い人間には、と言うセリフがありますが。
涙と共に食べた寿司の味も格別な人生の味です。
今日迄湖山にコロナ1人 ご苦労様です
感謝致します