10代の頃、映画を観た後の若者のたまり場は喫茶店です。
月1回、渋谷の喫茶店に、ミステリー、映画ファンの学生が集まります。
普段はオタクの学生もたまには、新しい小説や映画の情報交換や同好の士を探しに来るのです。
主に早稲田大学、中央大学のミステリー研究会のメンバーです。
女子学生は殆どいません。
今は亡き、学生街の喫茶店です。
コーヒー一杯で、4時間、20人位が粘るのです。
しかも暗い。
隣同士で、ボソボソ話しているだけです。
マンモス喫茶店で、一般客に迷惑をかけないように、奥の席をとります。
煙草も吸わず、音楽もなく、騒ぐこともない、不気味な若者の一団です。
髪は短く清潔だけども、おしゃれに程遠く、ダサイ。
アーミージャケット、ジーパン、セーター、マフラーの身繕い。
コーヒーかメロンソーダ、たまにアルバイト明けにパフェのご馳走。
普段は土中のモグラがたまに地上に上がって来ると思って下さい。
でもその中で私だけはジャケットにネクタイで、もしかしたら、もうアタッシュケースだったかもしれません。
007の影響で流行っていたのです。
どうしてあんな重い物を持っていたのでしょう?
今だったら腰を痛めます。
こういう気味の悪い一団を受け入れる喫茶店は、当然流行っている筈がありません。
最初は店も、何時もの団体さんとして、喜んでくれます。
でも、このオタク団体がいると、デートカップルや買い物帰りの家族、最後は風体の怪しい人達ですら、店に寄り付かなくなります。
店長が気を遣って、コーヒーや水のお代わりをしてくれるようになったら、もうお仕舞いです。
扉を開けたお客が、灯りを消した奥の一団を見つけると、そうっと扉を閉めて、去って行くようになります。
やがて、オタクしか来なくなった喫茶店は閉店となります。
でも心配はいりません。
同様の寂しい喫茶店を探し出して、巣を移すのです。
こうして、学生街の喫茶店は歴史から消えていったのです。
消えていく者は歴史的必然
今日も湖山にコロナゼロ ご苦労様です