【銀座湖山日記/5月16日】父の背広

【銀座湖山日記/5月16日】父の背広

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昨年93歳で亡くなった父聖道理事長の遺品を、週末になると少しづつ整理しています。
遺品の整理は遺族の心の整理として大事な事です。
と精神科の教授に言われていましたが、これ程重い事とは知りませんでした。
6年間の間、湖山病院でリハビリ生活をしていました。
ワードロープにはクリーニングをして、袖を通していない背広が60着並んでいます。
英國屋で仕立てた服が多く有ります。
夏はこの白地に縦縞の柄を良く見たな。
大好きだったネクタイは結目のところが黒くなっている。
このネクタイは私のだった。
父のネクタイが古いのばかりだと、母が私のところからだいぶ持っていったのだな。
ネクタイは私がまた使うようになりました。
父に首を絞められないように、日々の戒めとします。
スーツの処分に困りました。
和服と違ってお直しをして使うと言うことが出来ません。
古着屋やリサイクルショップに引き取ってもらう事も考えました。
結局、礼服とジャケットを1着ずつのこして、全部捨てる事にしました。
ゴミ袋に詰めて9袋ありました。
1ヶ月かけて、1袋ずつ廃棄しました。
袋を通してうっすら見える見慣れた父の背広の柄はただの服ではありませんでした。
後ろ髪を引かれるとはこの事でしょう。
思い出の埋葬。
高齢者を見守り見送る仕事のプロフェッショナルの筈が、我が親となると全然勝手が違います。
当たり前だけど。
子供の時から背後の慈愛に満ちた父の視線を感じながら生きてきました。
結局、65歳になっても、聖道理事長の息子として生きてきたのだな。
父を看取って、私はやっと成人式を迎えたのだなと、空を見上げました。

65歳の成人式

ベルトは短くて使えません
帽子は何とか被れます

父の思い出は、湖山の思い出の中に

湖山グループ 代表 湖山泰成