【銀座湖山日記/5月12日】ハワイのホスピス

【銀座湖山日記/5月12日】ハワイのホスピス

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昨年度は亡くなられたご利用者から、多大な寄付を頂く事が2件ありました。
一件はご本人の遺言によって、一件は遺族からです。
感激です。現場職員への感謝の証と信じるからです。
施設に残る物として、家具や絵画を選びました。
一般的には、スタッフは他の入居者の方に気持ちの負担を掛けないように、寄贈者の名前を秘匿しようと考えます。
それは違うと思います。寄贈者の名前を明示すべきと思います。
20年も前に、ハワイのキリスト系のホスピスと病院の視察に行きました。
玄関ホールの壁には、ドネーションツリーと呼ばれる木の絵が描かれています。
その木の葉には、一枚一枚寄付者の名前が書かれています。
金額によって葉っぱの大きさが違います。わかりやすい。
病室の廊下の壁にはは一部屋毎に銀のネームパレートが貼ってあります。
一部屋分の建築費を寄付した人の名前だそうです。
有名な日本企業の創業者の名前が並んでいます。
匿名の寄付者の陰徳としても、頂いた方は感謝して使わせて頂くだけでなく、社会にも感謝を伝えるべきだと思います。
少なくとも西洋社会はそうです。
他に、ホスピスで衝撃を受けた事があります。
キリスト系ホスピスですから、祭壇のある、人ひとりしか入れない、小さな部屋がありました。
嘆きの間と言います。
私は、死を前にした患者本人が神に祈り、嘆き悲しむのですね、と聴きました。
違います。ご本人はどなたも最後の瞬間迄笑顔でスタッフに感謝なさって息を引き取られます。
後わずかで命を失われる患者さんに何時も笑顔で明るく接しなければならないスタッフが耐えられなくなります。
その時、この部屋にこもって、一人泣き崩れるのです。
私は息もつけなくなくなりました。
明るく楽しそうな施設であっても人の命は重く尊い。
だからこそスタッフは何時も明るい笑顔を絶やさない。
人の死を見送る仕事の意味とは何だろうと自問します。
死んで行く人間の悲しみと、お世話しお見送りをする人間の悲しみは同じ重みを持つと。そして、気が付きました。
病気を治す、命を守る、生かす為の病院だけではないのだ。
体も心もお世話し、最期までの人生の同伴者となる。
そう願う人と共に働く病院施設を作りたい。
湖山の道を決めた、ある日の一つのエピソードです。
未だ道半ばとしても、その志は忘れる事はありません。

やがては見送られる者として、見送る役目の方へ
湖山グループ代表 湖山泰成