【銀座湖山日記/5月5日】強く優しく

【銀座湖山日記/5月5日】強く優しく

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学生の頃、国政選挙のボランティアをしていた事をお話ししました。
社会改革に貢献したい、そういう仕事をしてみたい。
子供の時から憧れていたのですね。
国際的ジャーナリスト、政治学者、政治家。
官僚だけは私の性格、能力ではもたないとわかっていましたので、始めから検討外です。
先ずは父の友人の議員の選挙応援に行ったのです。
お遊び気分でご迷惑だったろうと今はわかるのですが。
秘書と商店街を歩き回る事もありました。
毎日後援会幹部とお酒を飲みながらライバル候補の動勢をを分析します。
ライバルが立会演説会で何を言ったかは直ぐに情報が入って来ます。
ライバル候補も当然同様の事をしている筈です。
情報戦で、如何に自分の支援団体を切り崩されないように守るか。
相手の支援団体を切り崩して行くか。
そんな作戦会議での下っ端の仕事はコピー取りと伝令メッセンジャーです。
女子は鶯嬢で大事にされますが、新兵は裏方です。
候補が乗る街頭演説車のコースを先回りをして駐車の場所取りをします。
人の集まる駅前や交差点を確保しなければなりません。
当然ライバルとの陣取り合戦です。
品のないヤジもあります。議会のヤジと同じです。
知性と品格ではなく、罵倒派の肉体戦、騎馬戦です。
花見の場所取り合戦も似ているなと後に気がつきました。
政治家を目指して秘書になり、区議会議員、都議会議員と階段をよじ登って行く。
自分のような虚弱軟弱の徒の生き残れる世界ではありません。
その世界で印象的だったのは、後援会事務所で裏方をニコニコとこなしているスタッフです。
商店街の奥さん、アルバイト学生、仲間の議員からの応援スタッフ。
食事の準備。ビラの配送。業界団体からの推薦状の掲示。事務所の掃除。
そして戦場に出る候補者への激励。
選挙の為に区域内のお祭りやイベントを挨拶に廻ります。
でも、選挙戦こそが真剣勝負の現代の本当のお祭りだと思いました。
勝てば、支援者の仕事は終わりです。
落選者の事務所には潮が引くように誰もいなくなります。
諸行無常の鐘の音もありません。
政治家を目指すより、良い政治家を支援できるような知性も力もある人間になりたいと悟った22歳でした。
その思いは今も変わりません。

強くなければ生きていけない、優しくなければ生きて行く資格がない。
フィーリップ・マーロウ
湖山グループ 代表 湖山泰成