当時の小学生の1番の楽しみはなんと言っても漫画雑誌です。
一年の頃は、「少年」「冒険王」と言った月刊紙でした。
やがて、「マガジン」「サンデー」「ジャンプ」と言った週刊誌の時代が来ます。
全部買えるほどのお小遣いは貰えませんから、当時はどこの街にも文房具屋兼貸し本屋があり、ランドセルを背負ったお客様が押し寄せました。
違う雑誌を交換して友情を育むのもその頃の思い出です。
小さな店舗の真ん中にお風呂屋さんの番台の様な席があって、ランドセルを背負った小学生は、おじさん!と叫ぶと奥から店主のおじさんが出てきます。
鉛筆やノートを買うついでの様に店に入って、マンガ雑誌を立ち読みするのです。
やがて、早く借りるのを決めて!と店主から声がかかるので、渋々1冊借りる本を決めます。
何故か恥ずかしくて、隠す様にして抱えて走るように店を飛び出すのです。
マンガ週刊誌は発売日の前夜駅の売店に並びます。
その一日が待ちきれず、夕方駅に走ります。
夕闇の混雑している商店街の真ん中を全力で走って、ハーハー言いながら駅の階段を登って改札口の外にあった売店に顔を突っ込みます。
買ったばかりの雑誌を開いて読みながら歩いて貸し本屋さんに行きます。
読了したばかりの新しい雑誌を、貸し出し料金の50円引きで買ってもらうのです。
エジソンは少年時代列車で新聞を売っていましたが、泰成君は値引きで雑誌を貸本屋さんに卸していた訳です。
翌朝まだ読んでいないクラスメートに、優越感を持って少しだけ話してあげます。
BOOKOFFのない時代、ほのぼのとした貸し本屋さんはランドセル少年のデイサービスでした。
牛乳瓶の蓋の様なレンズの眼鏡をかけた、店主のお爺ちゃんの顔と声は今も覚えています。
小学校卒業の頃、その貸し本屋さんは店じまいになりました。
その後、後継ぎがいないので廃業になる街角の本屋さんを沢山見ることになります。
店じまいの日、泰成君は今まで貯めてきたお年玉とお小遣いの全財産を握ってマンガを買い占めます。
こっちの棚からこっちの棚迄下さい。
大人買いはこの頃だったのですね。
その時のマンガがは今でも、脳裏に、心の奥に残っています。
主人公は今でも私の心の中で生き続けています。