小学生の時は、泰成君は毎年学級委員か図書委員をしていました。
日差しの強い外で遊ぶのが苦手なので、休み時間は隠れるように図書室に逃げ込みます。
毎日一冊借り出して、往復3時間の電車通学中に読み切るのです。
6年間で全ての蔵書を読んだと思います。
当時の図書室には「偉人伝」「歴史」「図鑑」が並んでいます。
野口英世、シュバイツアー、エジソン、ヘレンケラー、ケネディ。
マンガ日本の歴史、科学の図鑑、船の図鑑。
全く違った世界の知識、理論を医療福祉の世界に持ち込んで未来の事業を考えるのは、その頃の読書の影響かもしれません。
今の小学校の図書室にはどの様な本が並んでいるのでしょうか。
図書室に飽きたらなくなると、本屋さんに日参します。
そこで見つけたのが趣味の雑誌です。
ミステリーマガジン、SFマガジン、そして映画の友です。
読むと、雑誌読者の例会が毎月第3土曜日の午後にある。
場所は自転車会館で父の虎ノ門病院のすぐ隣です。
学校も土曜日は午後はお休みです。
神のお導きとしか思えません。
会場は学校の教室位、何時も50名位集まります。
大学生、予備校生の男性がほとんどです。
オタク族のメッカでした。
恐れを知らぬランドセルを背負った小学生は、図々しくも1番前中央の席に座りました。
始まると、なんと淀川長治先生がいらして、目の前で話始めます。
映画のビラ一枚で、試写会で観たばかりの映画の紹介をするのです。
この話が、落語より講談より映画より面白い!
フェリーニ、ヴィスコンティ、ヒッチコック。
チャップリン、キートン、ボガート、アステア、クラーク・ゲーブル、ゲーリー・クーパー、そしてゲーリー・グラント。
何故か女優の話は少なかったです。
アラン・ドロンの話になると止まりません。
ドロンはどんなお爺ちゃんになるのですかね、きっとこんな風になるのでしょうね。
と言って、自分の頬を指差すのです。
とにかく、一瞬も目を離せない、忘れられない映画授業でした。
映画には表現技法、ルールがあるのでそれを知らないと物語に秘められた監督の真意がわからない、など教えられました。
淀川さんはなくなる前のインタビューで、友の会の頃の事を、ランドセルを背負った小学生も来ていたんだよ。
と、懐かしそうに語ったそうです。