『レスラー』
女性には見せたくない。見なくていい。そんな男の映画です。
ミッキーロークといえば、ナインハーフで色男を演じたのが印象的です。あのにやけた笑顔が大嫌いだったのですが、なぜかあの笑顔が素敵だという女性が多いのです。でも、かつては栄光を味わい、今はすべてを失った男。チャンピオンレスラーも今は老いと孤独と貧乏。ミッキーロークの人生そのものと重なり、彼と同世代の小生は感情移入してしまう。かつての二枚目の笑顔で苦しみも淡々と受け止めているように見えたが、最期はやはり、怒りが爆発します。レスラーは体を傷つけ、最期は命をかけます。映画を観る時にいつも考えるのですが、自分だったら主人公のようにするだろうか。きっとするだろうな。そういう自分、男でありたい。不幸で、無残であっても最期の花を咲かせたい。老いて感じるのは、残す物も未練もなくなってくることです。最期に残されるのは肉体、命です。
レスラー仲間の友情も、娘との不仲も、ファンとの交流も納得感があります。そうだろうなと感じつつ、彼の老いと人生を理解できます。意外性も驚きもありません。でも、本当の人生を感じます。今年のハードボイルドの傑作です。
映画会社は主役をニコラス・ケイジで考えていましたが、監督がロークにこだわり、ニコラス・ケイジが役を譲ったという友情物語も有名です。敗者復活を応援するアメリカの良さの物語です。ストリッパーのマリサ・トメイも素敵です。ミッキーのボクシングも、マリサのストリップも本物です。人生は過酷である、ゆえに美しい。女には見せたくない、男だけの世界。アカデミー賞受賞おめでとう(こ)