【逆転の経営】第14回 - 健康大国・日本は医療と介護で国際貢献すべき –
介護保険で培った『日本的サービス』をアジアに輸出
国策として、『メディカルツーリズム』が検討されている。しかし、今のところ、世界に冠たる日本の医療をめざして来航客が増えたという話は聞かない。日本の国力が相対的に落ちて、世界における日本の存在感が薄れているので、健康大国・日本として、高い医療技術を評価してほしいのだが、残念なかぎりである。
世界に冠たる国民皆保険は日本唯一のものである。最近、オバマ大統領がつくろうとして話題になっている医療保険制度は、日本のものとはかなり格差がある。世界的にみれば、金持ちだけが一流の医療を受けられることは当たり前のことで、日本だけが特殊なのであるが、日本国民はそのことをあまり知らないし、理解も感謝もあまりしていない。当たり前の権利だと思っている。日本の医療制度は、平等・均等のサービスを提供することを第一としている。その仕組みのもとに発展した現在の病院は、『アメリカ型世界標準』などにはまったくなじまないし、太刀打ちできないというのが正直な感想である。
また、日本人の医師や看護師も、金の切れ目が医療の切れ目、命の切れ目になることに耐えられない。健康保険で認められていない抗がん剤治療をしていた、東京の医師は、『混合診療』に反対していたそうだ。費用を払えない人の治療をやめるような状況には、精神的に耐えられないと嘆いていた。アメリカでは、このような心情は一般的ではないであろう。日本の文化では、金持ち相手だけの教育や医療というものに対して、不道徳な感じがするのではないか。
これから日本が世界に貢献するには、介護保険制度で培われた高齢者のリハビリや療養といった『日本的サービス』が重要になってくるのではないか。独特の日本文化を誇る”ジャパニーズ・テイスト”の総合生活サービスといえる。介護保険制度での各施設体系のサービスを、留学生の研修を通して中国やアジア諸国に”輸出”する教育産業として考えることもできる。
タンカー規模の大型『病院船』で国際貢献
国際協力機構(JICA)や政府開発援助(ODA)で、日本人が世界に貢献するのならば、医療が最適だろう。資金も人的活力も衰え気味の日本ではあるが、平和技術大国日本の『病院船構想』はいかがであろうか。
かつてアメリカには、飛行機やロケットや宇宙技術があり、日本には、造船や自動車があるといわれてきた。しかし、造船は、韓国・中国に押され、自動車もやがては、中国・インドに追いつかれるであろう。
世界最先端の技術を育て、日本の工業技術産業の牽引となるモデル事業。そして『平和日本』の存在を世界に表明できる象徴として、タンカー規模のハイテク大型病院船を多数造船し、日本の全都道府県の港に配船するのみならず、ODA、国連の平和維持活動にも、自衛隊による病院船での参加を中心とする。世界からみた日本のイメージは、世界の海に浮かぶ病院船によって、格段に向上するだろう。また、首都圏で直下型地震がおきると、死者1万1000人、負傷者21万人と予想されている。陸路が遮断され、首都中心地には空路でしか到達できなくなる。しかし、お台場や晴海等の湾岸エリアであれば、海からの進入は可能である。隅田川も重要な路線となる。救援隊の進入路としては、大型船による運輸搬送能力を発揮できる。
海のない都道府県もあるが、それ以外の各都道府県の港に船が配置されていれば、どの都道府県で地震災害がおきても、どの都道府県からも救護班が応援に行ける。首都圏災害には、全都道府県からの支援が必要である。『行き』には、救援資材・食物・医薬品を満載し、『帰り』には負傷者を搬送し、各都道府県の医療機関で治療を引き受ける。どの都道府県での応援に対しても、全国からの応援が継続できるので、被災民は日本国全土体が救命を保証し、担ってくれているという安心感をもてるだろう。国民の安全・安心を約束し、信頼してもらうことができるのではないか。
パンデミック対策として『最新鋭医療空母』を
感染患者の隔離は、日本では法的制限があるため、迅速にできないと心配されている。タンカー規模の大型船に収容することで、迅速に行えるようになる。また、最悪の場合、感染被災地に近寄れない場合は、洋上での治療対策研究センターとなる。陸上との連絡のため、ヘリコプター搭載が重要になる。
軍事目的でない、医療ヘリコプターのみを搭載した『最新鋭医療空母』は日本独自のコンセプトであろう。テロの場合は、軍事攻撃を受ける危険もあり、自衛隊による防御能力や武器が必要となる場合があるので、自衛隊による運用が現実的かもしれない。
医療活動であっても、テロや誘拐等の危険はあるので、洋上中心での活動はより安全といえる。また、高機能な設備を提供できるヘリコプター搭載の医療空母として、自衛隊に配備すれば、細菌戦やバイオテロに対する防衛部隊としても有用である。
『最新鋭医療空母』は世界技術大国日本の象徴となり、世界中の被災地で、この船影は『救いの女神』として、日の丸の国旗と同様に、世界に知られることになるであろう。
多大な建造費はODAの予算から投入されるべきであろう。国内重工業企業に最新鋭船の開発を担わせることにより、世界に秀でた技術を、国策として育成させることができる。医療技術開発にも貢献し、この分野で日本製品を世界に広める機会にもなる。
豪華客船に、透析、リハビリ機能が搭載されれば、老人、病人でも安心して海外渡航できる。産院としての機能があれば、単身女性でも安心して優雅に出産ができる。美容整形の手術室があれば、術後の期間も、人目を気にせずに養生できる。日本中の港をまわる航路の豪華客船は『浮かぶ老人ホーム』にもなり得る。小型の船なら『デイサービス船』として、瀬戸内海の島々を回ることもできる。
小型のタンカーはすでに競争力を失っているが、病院船としては、多数の患者被災者を受け入れられる。太陽発電、甲板での植物・動物の育成も可能である。最新技術によるエコ自給自足の浮かぶ城であり、浮かぶ実験室、研究室にもなる。
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【解説】
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