銀座シネマタイム21 『スター・トレック』

銀座シネマタイム21 『スター・トレック』

『スター・トレック』

子供の時にSFは自分の将来の夢そのものだった。手塚治虫、石森章太郎の漫画は来るべき日本の未来、ひいては自分の未来の生活だと思っていた。小学生の時、テレビで観た「宇宙大作戦」は人類の未来の繁栄を予言していた。人類の将来はそう甘くない、明るくないと気づくにはそう時間はかからなかったが、当時のわくわくする胸のうちは、いまだ子供の時のままだ。スター・トレックは訳せば宇宙幌馬車隊。TV企画の時はまさしく、大西部のかわりに宇宙を羽ばたく人類の騎兵隊の設定だった。時は冷戦の時代。正義の銀河連邦と敵対する野蛮な敵異星人との戦いはまさしく、アメリカの建国の歴史の焼き直しである。今思えば帝国主義礼賛と言われてもしょうがない。でも、乗組員は黒人、東洋人きちんと配置され、白人の艦長の下であるが、一致協力し、時には異文化の異星人にも理解を示し、未知の航海に挑む。一番の人気者になったのは、バルカン人と地球人との混血の科学士官スポック副艦長で、演じたレナード・ニモイはSFファンダムのカリスマイコンとなった。今回はニモイ自身が未来の本人役で登場している。医師のマッコイは艦長の友人で重要な役所である。ワイアット・アープとドク・ホリディのコンビであろうか。本編は主人公カークが艦長になるまでの、スター・トレック・カーク艦長ビギンズと言える。タイムパラドックスのストーリーはどうしても矛盾に満ちて納得しづらいが、気にしないでほしい。製作監督のJ.J.エイブラムスはTV番組のスパイアクション「エイリアス」、謎に満ちた無人島漂流奇談「LOST」の荒唐無稽な物語設定とスピーディーに満ちた場面展開で絶賛を浴び、トム・クルーズの目に留まり、「MI:Ⅱ」で監督デビューを果たした。今回はおなじみクルーの若き日の紹介や、コバヤシマルテストなど今までファンなじみのエピソードにこだわりすぎて、監督らしさが発揮されていない。永遠不滅の本シリーズの次回もきっと、エイブラムス監督で製作されると思う。次回こそ楽しみ。そう思って、長生きを心がけている。(こ)