銀座シネマタイム17 『スラムドッグ$ミリオネア』

銀座シネマタイム17 『スラムドッグ$ミリオネア』

『スラムドッグ$ミリオネア』

学校にも行ったことがないムンバイのスラム出身の孤児で、電話会社のお茶くみの18歳の少年ジャマール。インド最大のクイズショーに出演し、後一問正解すれば番組史上最大の賞金を獲得できるところまで正解を出し続けた。いまだかつて医者も弁護士もここまで正解を答えられたことはない。インチキをしているに違いない。最終日の前に警察に捕まり、拷問のような尋問を受ける。そして、彼の生まれながらの命からがらの悲惨な人生体験が語られていく。ご存知、今一番注目のアカデミー賞総なめの作品。ダニー・ボイル監督は言っている「世界で最も過激な街インドムンバイで、起こりうる極端に過酷な経験と極端にロマンチックな愛を物語。子供から大人へと成長していく素晴らしい人生の旅には沢山の興奮と運命が待ち受けているんだ」。爆発しそうなインドのエネルギー。やくざ組織にさらわれ犯罪につかわれるか、目をつぶされて身を売られる猥雑で悲惨な孤児たちの人生。しかし、逞しくかわいい。スラムとハイテクビル。兄、女の子との別れと再会。素早い場面展開で飽きさせない。でもインド映画と言うより、やはりハリウッド映画だ。役者は英語を話し、インド映画お約束の歌って踊ってのフィナーレがハイスクールミュージカルのよう。ラストで二人が駅中でキスをするなどインド的ではない。ケチャップ風味のカレーか、いやカレー味のアメリカンドック。若者デート向き。インドスラムを描くアカデミー賞映画と構えないほうがよい。この映画が何故受賞したのか。「アメリカは世界の異民族文化を理解し受け入れる。世界平和を愛で」とメッセージを世界に送りたいのだろうと思う。そんなことに、こだわらずに楽しんで観て欲しい。いや、こだわっているのは私か。(こ)