銀座シネマタイム16 『ある公爵夫人の生涯』

銀座シネマタイム16 『ある公爵夫人の生涯』

『ある公爵夫人の生涯』

90年代に衝撃的な事故死を遂げ、今も世界中の人々に愛される王妃ダイアナ。そんな彼女の直系の祖先で、ダイアナ妃を思わせる華やかでスキャンダラスな生涯を送った女性が、この映画のヒロイン、ジョージアナ・スペンサーである。フランス王妃となるマリー・アントワネット誕生の2年後に、初代スペンサー伯爵の娘として生まれ、17歳で公爵に嫁ぎ、若くして社交界の華となった。政界でも指導者として重んじられ、真のルネサンス的教養人としてあらゆる藝術の良きパトロンとなった。しかし、私生活では無口無関心な夫とその愛人との同居に耐え、やがて首相となる政治家チャールズ・グレイと道ならぬ恋におちた。ダイアナ王妃とマリリン・モンローを足して2で割ったような女性だ。スターで、セレブで、感受性が強く、さらに内気で、人生は悲劇的。オールド・イングランドの雰囲気の貴族をはまり役のキーラ・ナイトレイが演じる。夫スペンサー伯爵もレイフ・ファインズとなれば、名優揃い踏みの歌舞伎みたいなもの。公爵夫人の心得を説く母親役にシャーロット・ランプリング。どうしても退廃的な愛を演じた「愛の嵐」のシーンを思い出してしまい、不具合に困惑した。でも、重みがあり、ナイスキャストなのだろう。この映画の見所は登場人物の演技より衣装である。舞踏会で登場する羽飾り当時流行したもので彼女は最初に身に付けた一人だった。付け黒子のシーンもある。本編で使われた化粧品はすべてシャネルである。彼女がパーティに窓から忍び込むCMをご存知か。彼女が日に2回健康のために温泉を飲むシーンがある。今でも、欧州の鉱泉利用の9割は胃腸のための飲用であり、温泉に入浴するのはドイツなど、一部でしかないことはあまり知られていない。(こ)