ジェネラル・ルージュの凱旋
大学病院の窓際医師、不定愁訴外来、田口公子(竹内結子)は、はからずも倫理委員会委員長に任命されているが、その彼女の元に告発文書が届く。「救命救急の速水センター長は医療メーカーと癒着している。看護師長は共犯だ」。頼りない調査が始まると同時に告発されたメーカー支店長がドクターヘリ用ヘリポートから自殺する。そして、そこにお約束の厚生労働省役人、白鳥(阿部寛)が患者を装って入院してくる。実は彼の元にも似た告発文が来ていたのだ。デコボココンビの珍道中捜査が前作と同様楽しめる。しかし、現職医師、海堂尊原作で昨今の疲弊状態の救急センター、経営再建のために利益にこだわる有能な事務長、大学病院の派閥。医師も予算も圧倒的に足らない病院現場。若いスタッフが消耗しながらも使命感から必死に診療にあたる現場をリアルに、テンポよく見せてくれる。演出指導に埼玉医科大学高度救命救急センターの堤教授があたっている。堤教授自身も33歳の時に都立墨東病院救命救急センター長を務めたことがあり、指導しながらも感情移入してしまったそうだ。題名の意味の謎解きや、後半大災害が起こり、多数の救急患者が搬送されてくる状況で、病院の全スタッフが火の玉になって対応する戦場のようなシーンは見ていて気持ちが一気に盛り上がる。トリアージの演出もうまい。急性アル中で深夜12時直前に入院し翌朝退院した患者が、2日分の医療費請求に苦情を言うシーンも笑えた。5年前「天国の本屋」の撮影現場を見学した時に見た竹内はガラス細工の少女のようだったが、温かみのある女優に成長した。看護師長の羽田美智子が「カッコーの巣の上で」の看護師を思い出させるような微妙な演技を好演している。病院界はこういう映画を国民に広めてほしい。(こ)